2014/07/10

J-REITの憂鬱とお守り効果(ただし、個人的に)


最近JーREITの調子良い。

東京オリンピックの開催が決まり、少しずつ会場や関連施設の整備が始まり出したことと、GPIFの投資配分の見直しに若干の恩恵を受けているためだろう。

今のところ東証REIT指数は2008年10月28日のリーマン・ショック後の最安値から、約2.3倍上昇し、同期間のTOPIXの上昇率より明らかにパフォーマンスが良く、これからも多少は東京オリンピックに向けて上昇していくのだろう。

地価や賃料は、日本の人口減少と既存不適格マンションの建て替えに関する法律が公布されたため、需要と供給の関係で長期的には下落するのがほぼ確定的と考えている。

既に高齢者の一定層は、長年住んだ戸建てを売却して、老人施設に入居するケースも増えてきている。

特に人口減少の影響は深刻で、過疎化が進む地方では、単なる空家から放置家屋にステージが移行してきていることから、自治体では空家条例の制定や居住用不動産の固定資産税の特例見直しの動きなどに繋がっている。

そもそも日本国の法制度においては、戦時中の国家総動員法の反動で、財産権は強固な権利として生まれ変わり、特に所有権は不可侵のものとされているため、土地そのものの資産性は高いものの、土地の価値そのものは需要から生じるため、経済成長期には優良資産であるが、需要がなくなれば流動性リスクと取引コストの問題が大きく、加えて、不動産は保有しているだけで税金である固定資産税と都市計画税が課される資産であることから、保有コストも無視できず、他の金融資産と比較して本質的に劣後する資産である。

そのため運用するにしても、自家使用して帰属家賃を得る場合も、表面の利回りと実際の利回りに開差がある金融商品である。

また、ほぼ全ての価値の源泉が需要からきているので、隣の家に不審者がいたり、ゴミ屋敷になったり、資産の所有者がどうにもできない理由で、簡単に価値が毀損する上、上物である建物は築年数と共に売却価格や賃料が低下して行く。

収益性を回復させるためには、リフォームやリノベーションが必要になるが、流行り廃りもあり定期的に工事が必要となることから、正にジェレミー・シーゲルの言う「資本を食う豚」になりかねない。

特に人口減少する日本国においては、長期的な価値の下落の問題に加えて、より大きな問題として、不動産から生じた不利益や損害については、株や債券と異なり基本的に無限責任があり、かつ、資産そのものの所有権を放棄できないことがある。(不動産の所有権は放棄できず、国や自治体への寄付も十分な価値がないと受け取ってもらえない。)

不動産オーナーという言葉は、家賃や住宅ローンに追われていた人には甘美な響きであるが、不動産が有する資産としての負の側面が今後増大することを考慮すると、既に人口20万人〜30万人程度の地方の県庁所在市や中核市程度の人口集積では、現時点でトータルでマイナスの資産になっている可能性が高いと思っている。

J-REIT自体の仕組みは悪くないが、長期的な地価の下落圧力に抗しきれず、東京オリンピックの宴の後からは下落して行くのではないかと思う。

J-REITはリーマンショック後の総悲観の中で、唯一底値近くで取得できた資産で、十分利益がでるタイミングで利確して、米国の増配銘柄に乗り換えを考えていたが、保有しているだけで土地問題や人口減少といった国力の問題に関心が出てくるし、 不動産のマイナス面を知ることで、不思議と新築住宅の建築や不動産の現物投資の表面利回の誘惑に対して、冷静に抵抗できるような気がして、お守りとして保有しておくのも良いと思っている。

2 件のコメント :

  1. 先生のblogsを愛読しているものです.REATの表記はtypoでしょうか.検索対策なのでしょうか.

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    1. 単純なtypoです。ご指摘ありがとうございました。

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