2014/07/19

「バフェットからの手紙」の編集者の引退

 「バフェットからの手紙」は、長らくバフェットが一人で執筆しているものと思っていたが、バフェットが書いたものを編集していた御年85歳の女性編集者が引退するという、NewYorkTimesの記事を読んで、長年疑問だったことが氷解した。

彼女は、経済誌のフォーチューンで60年間、編集や経済記事の執筆を務めた。
いわゆる文筆を生業にしてきたプロである。

「バフェットからの手紙」は、 ウイットに富んだ言い回し、格調高い比喩など、名文といって差し支えないレベルの書簡であり、これを単に集積したものがビジネスの教科書になるほどで、一言で言えば売り物になる文章力だ。

ジェレミー・シゲールの「株式投資の未来」や、ベンジャミン・グレアムの「賢明なる投資家」も、投資の教科書としては、最良書として挙げられるものではあるが、投資手法や各種分析と教訓などは、素晴らしいものの、「バフェットからの手紙」ほど機知に富み、卓越した文章表現は出てこない。

おそらくバフェットは、作家を志したとしても、食に困ることはなかっただろうと思っていた。

投資家として、これに匹敵する文章力を有する者とすれば、いままで読んだ本の作者では「本田静六」以外にはなく、本田は大学教授の傍ら文筆業を副業とし、多数の著作があることから、文章においてはセミプロみたいなものである。

ウォーレン・バフェットは空前絶後と思えるほどの投資家であり、彼の運用資産は一代で築いたものとは信じられない規模である。

時代が味方したこと、天性の資質、本人の強い意思などの外に、ずば抜けた頭脳があってのことと思うが、頂点を極めた者に二物はないのが世の常である。

むしろ一物である資産運用の能力に特化しないと、あれほどの成功者には成れないものと思う。

「バフェットからの手紙」は、バフェット自身が執筆しているほぼ唯一の資料であり、これによってバフェットの考え方や思想を学ぶ以外にないのだが、彼女のプロとして編集技術によって、洗練された読み物として、第一級の投資本の名著となったことは想像に難くない。
願わくば、長生きしてフォーチューンを引退しても、「バフェットからの手紙」の編集だけは、末永く続けてもらいたいものである。

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