2014/08/10

日本の年金は意外に低コスト!! (ただし、若者を除く.....。)


「遠い年金より、今の現金」
これは、ネットで見かけた主婦の格言だそうだ。
主婦にここまで言われた年金について、これを資産運用としてみた場合、投資に値する商品か常々疑問があった。

少子化による世代間の人数の違いによる不公平感については、各種報道や評論家が様々な論陣を張っているので、改めて述べるほどの事はないが、ここでは世代間の違いによる損得は考慮しないこととし、単純に年金保険料を支払う人間と年金を貰う人間が同数と仮定して検討して見た。

これは証券市場で、「買い」も「売り」も概ね同数参加するイメージである。

日本国の年金のシステムを大雑把に考えると、次の内容に集約できる。

①日本年金機構が市場参加者から資金(年金掛金)を集める。
②集めたお金をGPIFに預け、運用してもらう。
③日本年金機構が、定期的にGPIFから運用益と元本を交付してもらい、税金を加えて、市場参加者に資金(年金)を分配する。

至って単純な仕組みで、毎月分配投資信託に近いイメージである。
ただし、この投資信託では、購入者は60歳未満の人間のみであり、配当が受けられるものは65歳以上の人間のみと年齢制限があり、民間でこんな投資信託を発売しても、誰も見向きもしないので、国家だけがやむを得ずこの商品を提供している。

これを「年金ファンド」として、投資商品に値するかどうか検討してみる。

通常一般の投資信託には、「販売手数料」、「信託報酬」、「信託財産留保額」があり、購入・保有・換金それぞれの段階で経費が発生する。
この費用の合計はファンドの種類や運用会社等にもよるが、良心的なところで資産の0.5%以下、ぼったくりファンドでも3%が限度で、それ以上の経費がかかるファンドは、投資家に選好され辛いので市場から退場となる。

年金ファンドの場合、投資信託と同様の経費は「年金掛金の徴収コスト」、「GPIFの必要経費」、「年金の支払コスト」が相当する。

このうち、GPIFの必要経費については後日分析するとして、販売手数料と信託財産留保額に相当する年金掛金の徴収コストと年金の支払コストの入り口と出口の部分を検証してみた。

この2つのコストは、日本年金機構のみが行っている事務なので、この組織の予算や決算額そのものが該当する。
日本年金機構の「アニュアルレポート2012」(今は2014年の8月なのだが、前年のレポートがないという......。 上場企業であれば即解散だ!)を見てみた。

このアニュアルレポートは通常の企業のものと異なり、国民への年金行政の啓蒙が全体の9割以上を占めており、116ページもある大作にも関わらず、真に大事な部分は後半の107ページ〜111ページの僅か5ページ分である。

当初は、お役所の仕事でもあり経費率が高いと想像していたが、この組織は25兆4千億円を徴収し、46兆8千億円を年金として支払い、その経費は4千億円であった。

経費率の分母として、年金支払額を用いた場合「0.85%」と思ったより低コストであった。

もちろんこれにGPIFの運用経費が加算されるが、120兆円の資産を考慮すると、国債運用を除くとパッシブ運用が大半と思われるので、総経費率として「1.0%」程度になるものと思われる。

もちろん、 SPDRのS&P500ETF(1557:JP)などの総経費率「0.09%」と比較すると、10倍以上のコスト高に見えなくもないが、年金の掛金が所得税の計算上、社会保険料控除の対象であること、支払われる年金も雑所得から公的年金控除があることを考慮すると、実際にはいい勝負かもしれない。

世代間の公平性という致命的な問題(この問題は年金だけに限らない)はあるが、年金を投資商品としての観点で分析すると、そう悪いものではないという印象である。

0 件のコメント :

コメントを投稿